「綾、付き合っちょる人おるって、ホントかや?」


中学の時から、あたしと理一は付き合ってるだの付き合ってないだの、色々噂が流れていた。


郁子も耳にしたんだな……。


「付き合ってないよ」

「じゃあ、何なのかや」

「何って?」

「理一って奴。綾にとって何なのかや」

「……大事な、大切な人だよ」

「……ふぅん。京は? どげするか」


どうって……。


「郁子に関係ないじゃん」

「聞いちょるけん答えぇ」


何なの……何でそんなこと……。


「知らない。京のことは忘れた」

「何かや。そんなもんか、綾の京に対する気持ちは」

「……は?」


どうしてそんなこと、郁子に言われなきゃならないの?


郁子に、あたしの気持ちが分かるの?


「所詮その程度の気持ちだったってことだけん」

「何それ……。あたしが、どれだけ苦しんでたか知らないくせに」

「苦しんでた?」


郁子は鼻で笑って、あたしの言葉を一言一句漏らさないとでも言うように、黒髪を耳に掛けた。その行動に、無性に腹が立つ。