「ストレートティー。綾は?」
高校から歩いて30分程度。あたしたちは地元にある小さな喫茶店に来ていた。
外観は普通の一軒家と変わらない、雰囲気がいい温かみのある店だった。
「じゃあ、ミルクティーで……。こんな店、あったんだね」
ウェイターに注文してから、郁子に話しかける。
ここに来るまで大した会話をしなかったから、ぎこちない笑顔を向けると、郁子はあたしを少しだけ見た。
「綾は、京ばっか見ちょったからね」
「……何それ」
唇が震え、鼓動がうるさい。
「そのまんまの意味だが」
「……」
沈黙が流れた時、ひとりしかいないウェイターが沈黙を破った。
「お待たせしました」
ストレートティーとミルクティーがふたりの前に置かれ、視線に気づいて顔を上げると、ウェイターがあたしを見ている。
……?
あたしと目が合うと、ウェイターはにこっと笑ってから郁子の方を見た。
「珍しかね。郁子がひとりじゃなか」
少しからかうように、その人は笑う。