郁子からの電話から数日、あたしはまだ疑っていた。


そんな、まさか。そんなこと、あるはずがない。


あたしは現実から目を逸らすように、郁子を避けていた。


高校が別々でよかった……。


あの日から何回か連絡がきていたけど、電話に出ることは決してなかった。


……ありえないよ。


そう、あるはずがない。郁子がふざけているんだ。


もし、本当だとして。信じて、それが嘘だとしたら。


あたしはきっと壊れてしまう。



……もう充分に耐えてきた。

今さら思い返すこともない。


忘れたはずだったのに、名前を聞いただけで、どうしてこんなにも心が揺れるんだろう……。



郁子の言葉が、また遠くのほうから聞こえた気がした。


『……あたし今日、たまたま京の家の前、通ったけん。そしたら、京の家に……ダンボールがいっぱい届けられちょった。


 ……京、帰って来るんじゃなか?』