「今日はしいなちゃんち経由で帰ります?」

「あ、大丈夫。ほらリクもいるし」

そういってリクを見上げる。

リクは私の気持ちを感じとってくれたみたいで

「俺がついてるから大丈夫です。お気遣いありがとうございます」
そういってくれた。

「リク君がいれば安心ですものね。でも何かありましたら私の携帯にお電話下さいね。それじゃぁ私はここで失礼しますわ、ごきげんよう~、また明日ですわ~」

そういうとひなちゃんは構内にあるお迎え専用のお庭の方へ手をふりながら向かっていった。

その先にはもちろん神谷さんの姿があった。

私とリクは神谷さんにむかって頭をさげる。

神谷さんも私達に丁寧に頭をさげてくれた。

ひなちゃんが大きな黒塗りの車の後部座席に乗って、神谷さんがドアパタンとしめる。

車の窓から大きく手をふるひなちゃんをわたしとリクは見送った。

「相変わらず、駄目なんだ」

リクが言う駄目とは車の事だ。

「うん、神谷さんに気を遣ってもらうのも悪いし、何か車酔いしちゃうし・・・。」

私はどうにも車が駄目な体質らしく、閉じ込められちゃうみたいに感じてすぐに降りたくなっちゃう。

ひなちゃんちのおっきな車より私の家の部屋の方が狭いような気がするのに、不思議だ。

そんな事を考えているとリクが私の首に自分の黒いマフラーをまいてくれた。