「都筑さん」
「はい」

吾郎は居住まいを正して木谷に向き直る。

「実は昨日、別の会社のプレゼンがありました。業界トップの広告代理店、と言えばあなたもお分かりかと思いますが…。私はそこと何年もつき合いがありましてね。今回の広告全般も、そこにお願いするつもりだったんですよ。でもこの原口が、その前にどうしても御社のお話を聞いて欲しいと私に言いましてね。そんなに言うならと、今日あなたのお話を聞かせていただきました。結論から申しますと、聞いて良かったと思っております」

えっ!と吾郎は思わず目を見張った。

「あの、それでは?」
「ええ。アートプラネッツさんにこのマンションの広告全般をお願いします。昨日プレゼンに来た広告代理店の予算よりも、更にお支払いする額を上乗せしますよ。それだけの価値があると、あなたのお話を聞いて感じましたからね」
「ありがとうございます!」

吾郎は立ち上がって頭を下げる。

「ご期待を裏切らぬよう、精一杯やらせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします」
「こちらこそ。楽しみにしていますよ。一緒に良いものを作っていきましょう」
「はい!」

木谷とガッチリ握手を交わし、吾郎は大きく頷いた。