「マエストロ、おはようございます。今夜もよろしくお願いいたします」

大河の運転でホールまで送ってもらうと、瞳子はすぐに挨拶回りをする。
足の痛みもそれほどではなく、これなら本番も大丈夫だろうとホッとした。

「おっ!まみちゃん。今夜は更に美しいねえ。クリスマスイブに、愛の名曲の数々を君に捧げるよ」
「あ…、ありがとうございます」

あはは…と愛想笑いでやり過ごし、瞳子は次にステージマネージャーの川上のもとへ行く。

「川上さん、おはようございます。昨日はありがとうございました」
「間宮さん!足はもう大丈夫なの?」
「はい。川上さんの手当てのおかげで、すっかり良くなりました」
「そう、それなら良かった。あ、ゲネプロは予定通り14時半からだから、あとでホールに来てね」
「かしこまりました」

川上と別れて一度控え室に戻り、台本とボールペンを持ってステージに向かう。

既に楽団員達が顔を揃え、曲をさらったり、リラックスして雑談したりしていた。

瞳子が挨拶を終えると、ゲネプロが始まった。