一人になった瞳子は、着ていたジーンズとニットから、シャンパンベージュの光沢のあるドレスに着替えた。

髪もアップでまとめてメイクを整える。

ロングドレスで足首まで隠れる為、シューズはローヒールにした。

準備出来ました、と声をかけると、大河は部屋に入るなり目を見開く。

「瞳子、すごく綺麗だよ」

ベッドの端に腰掛けた瞳子の隣に座り、大河はそっと瞳子の肩を抱き寄せて口づけた。

優しいキスにうっとりしたあと、瞳子は大河の顔を見て目をぱちくりさせる。

「やだ、大河さん。リップが付いちゃった」

慌てて左手を伸ばして大河の唇に触れると、大河は逆にその手を掴んで、瞳子の薬指に口づける。

「俺だけの瞳子。こんなに綺麗な姿を誰にも見せたくない。このまま二人でどこかに行かない?」
「そ、そんな。ダメです。お仕事だから」
「そうだけど…。でも瞳子から目を離したくない。今日のコンサート、聴きに行ってもいい?」
「それが、チケットは既に完売で…」

そっか、と大河は肩を落とす。

「じゃあロビーで待ってる」
「ええ?!コンサートは2時間もあるのに?」
「ああ。瞳子をこれから車で送って行って、そのまま待ってるよ」
「それだと更に長くなります。開演は17時だけど、私、14時半からゲネプロに立ち会うので」
「構わない。ほら、行こう」
「えっ、ちょ、大河さん!」

戸惑う瞳子を抱き上げて、大河は部屋を出た。