切れ長な瞳で問われ、言葉に詰まってしまう。

「食欲、あまり無くて」

「気持ちは察する、それでも食事はちゃんと摂らないと。この後の予定は?」

「実家に帰って片付けをしようかなって」

「うん、片付けなら俺でも手伝えるね。帰る前に腹ごしらえをするか!」

 和樹お兄ちゃんは話をまとめ、ナチュラルに同行を求めてきた。
 通夜、葬儀、四十九日の法要の手配まで手伝って貰っておいて、これ以上は流石に甘え過ぎだ。

「せっかくだけど……」

「ハンバーグ、グラタン、オムライス。あぁ、軽くサンドイッチもいいなぁ。ちなみにサンドイッチの具はタマゴが一番好き。俺、味覚が子供なんだよね」

 ペロッと舌を出し、おどけてみせる。

 和樹お兄ちゃんの立ち振る舞い方は見本にすべきもので、食事の誘いを遠慮する私へ大人ぶらなくてもいいんだと伝えている。

 ーーけれど。

「……ふふ、はぁ」

 笑って、息をつく。

「これから1人で何でもやっていかなきゃいけないの。いつまでも子供じゃ居られない」

「何もかも1人で抱えて無理するのが大人じゃない」

 お兄ちゃんに家庭教師をお願いしていた時期がある。学校や塾の先生に教わるより、ずっと頭に入りやすく、心で受け止められる。

 今も虚勢を張る私を諭し、込み上げる涙をハンカチで拭う。

 あぁ、和樹お兄ちゃんの指、温かい。