「ふぅ」

 また、ひと息。

 棚の上の写真立てには、和樹さんと想いを通じ合わせた数年後を飾ってある。

 正樹は私達が結婚すると同時期に海外出張が決まり、今やあちらの水の方が合うらしい。

【それでは次の問題です】

 留美はアナウンサーの道を進み、活躍している。まだ先の話だけど私が職場復帰する際は、最前線で働く彼女に助言を仰ぎたい。

 みんな、それぞれを歩んでいる。
 ポー、ポー、ポー、鳩時計が鳴った。

「はぁ……」

「あれ、疲れちゃった?」

 サンドイッチを持った和樹さんが隣へ腰掛ける。

「ううん、そうじゃない。あの鳩時計、和樹さんがひとり暮らししている時から使ってるよね」

「うーん、そうだったかな?」

「今はあなたが側に居てくれる」

 鳩時計を数え、寂しくなる夜はやってこない。
 寄り掛かると肩を抱いてくれた。それからお腹にも手を添える。

「果穂は1人じゃない。俺がいて、この子もいるんだ」

「うん」

「愛してるよ、果穂」

 天国のお父さん、お母さん。
 私は今、幸せなため息をついてます。

おわり