「おじさん達が亡くなり、学費や生活費を援助するようにするようになって。そういう立場から果穂に気持ちを言うのは付け込むみたいでさ。果穂も断わりにくいんじゃないかと」

「私、断ったりなんかしない。あなたが好き、和樹さんが、ずっと、ずっと好きだった!」

「あぁ、こんな風に泣かしてしまうとは。俺はイケないお兄ちゃんだったな」

 泣きじゃくる私に柔らかい息遣いが触れる。この距離で泣き顔を見られるのは恥ずかしいが、キスの予感に身を捩れない。

「ん? どうした?」

 和樹さんは承知していて焦らす。

「想いが通じ合ったらキスをするって、私、知ってるよ」

「はは、俺はまだ好きだって言えてないよ。実は恋人には少々意地悪したくなる質でねーーっ、うわっ!」

 行儀が悪いものの、私はテーブルを超えて和樹さんを押し倒す。僅かながら残ったお兄ちゃんの仮面を剥がす為、頬へ口付ける。

「こ、こら! こんな真似してタダで済むと思うなよ」

「幾ら?」

「え?」

「タダじゃないなら幾らなの? 出世払いでいい?」

 赤くなる和樹さんを尚けしかけ、私は笑う。きっと上手に笑えている。

「……果穂、出世払いなんて悠長だぞ。今すぐ、この場で支払って貰わないと」

 私を乗せたまま上半身を起こすと耳元で囁いていた。

「当然、君の身体でね。優しいお兄ちゃんの時間は終わりだ」