彼は自分の顔を確かめろとばかり、こちらの顎を持ち上げる。

「……告白? 知らない」

「だろうな、人が気持ちを伝えてるのに果穂チャンは連れの男に気を取られてた。あれが和樹お兄ちゃん?」

「まさか、その時の腹いせでこんな事をしているの?」

「ああ、そうだよ!」

 行いを恥じるどころか正当性を主張された。
 当時の私の態度に落ち度があったにしろ、ここまで卑劣なやり方は許せない。まして瑠美まで利用するなんて。

「告白してくれたのに覚えていなくてごめんなさい。でも仮に告白にしっかり耳を傾けたとしても、あなたを好きになって付き合う事はなかったと思います」

 刺激するだけだろうが本心を述べた。高校生だった私も今の私も、彼へ抱く気持ちにズレは生じないはずだ。

 【ピンポーン】

 そんな折、インターホンが室内に響く。
 最初は無視し、ひたすら私を睨み見下ろしていた彼だが、連打されて気を削がれたらしい。

「ったく、誰だよ。こんな時に」

 ガリガリ背中を描きつつモニターへ向かう。一方、私は圧迫から開放され半身を起こす。
 なんとTシャツが破かれており、流石に下着姿じゃ逃げられないか。

「は? ピザ? 頼んでないんだけどーーえ、もう金は払ってあるの? はぁ、瑠美から?」

 きょろきょろ見回していたら、会話内容を拾う。部屋にピザが届けられるらしい、これは外に逃れるチャンスだ。なりふり構っていられない。

 ーーよし、彼がピザを受け取るタイミングを狙い、飛び出そう。