「和樹さんですか?」

 待ち合わせに指定されたコンビニへ着くなり、声を掛けられた。

「君が瑠美さん?」

 店内に入らず駐車場で俺の到着を待っていたらしい。血の気が引いた顔立ちは泣き出す寸前。苛立ちをぶつけたくなるのを抑え、事情を聞き出す。

「正樹の話によると、君の友達の家に行ったんだよね?」

「は、はい。あの、弟さんから連絡して貰っちゃってすいません。和樹さんへどうやって知らせたらいいのか分かんなくて」

「そんな事はどうでもいい。君が友達の住所を知らないとしたら、誰に聞けば分かるかな?」

「それがその、弟さんにも言いましたが」

 彼女は力なく首を横に振った。

 昨夜から果穂ちゃんと連絡が取れなくなり、現在に至る。トラブルに巻き込まれた果穂ちゃんを助けたくて、いちにもなく駆け付けたはいいが肝心の居場所を把握できない。

 正樹も知っていそうな人物へ聞いて回るものの、有力な情報は得らず。

「本当にごめんなさい、あたしが果穂を!」

「待ってて」

 俺はすばやく水を購入すると、彼女へ渡した。

「飲んで。いったん落ち着こうか」

 悠長な事も言ってられない。しかし、彼女を責め立て泣かしたところで無意味だ。

「飲んだら深呼吸して」

 とりあえず店先へ移動、怯え切った背中を撫でてみる。すると限界まで溜めていたであろう感情が溢れ出す。

「先輩に果穂を紹介しないとアナウンサーになれなくするって言われて。先輩の両親が芸能界と繋がってるから」

「自分勝手だな。果穂ちゃんは君を親友だと言ってたよ」

「は、はい、あたしは、親友をーー自分の夢の為に売りました。果穂はあたしの為に先輩の部屋へついて行ったのに」