惨めで可哀想の響きにグラスの中が波立つ。

「瑠美も言ってましたが、私達の関係だと手を出されるのが普通ですか?」

「援助の見返りを求めないのは、普通に良いお兄ちゃんだろ。俺は無理」

「ーー良い、お兄ちゃん」

 和樹お兄ちゃんが良いお兄ちゃんであるのに異論はない、ないけれど。瑠美に続き彼にまで同じ見解でショックを受ける。

「果穂チャン、ほら飲もうよ!」

「え、あっ」

 グラスを口に付けさせられ、煽られた。お酒が強くない私は段々とボーッとしてきて、多くを考えられなくなっていく。

(和樹お兄ちゃん)

 ふわふわ、ゆらゆらする意識でお兄ちゃんの姿だけが浮かぶ。
 優しく、時には思わせ振りな笑い方をして、いつだって私を翻弄する。良いお兄ちゃんでーーイケないお兄ちゃん。

 身体に力が入らなくなり、熱くなる。とっくに約束の30分は過ぎただろう。

「果穂チャン」

 胸元に伸びてくる気配がしたが動けない。

(私って本当にバカだな)

 後先考えず行動する自分を恥じつつ、それでも願わずにいられないんだよ。

(和樹お兄ちゃん、助けて)