「果穂チャン、友達想いなんだね。感心しちゃったなぁ〜」

 連れて来られたのは彼が暮らすマンションの一室。コンビニで買い揃えた品々を目の前に並べられ、ため息を飲み込む。2人で飲み食いする量じゃない。

 ソファーの隣へ腰掛けてきたので、私は即座に床へ座り直す。不自然な横並びとなり彼が肩を竦める。

「往生際が悪くない? そういうつもりで来たんだろ?」

「私、好きな人がいるので!」

「は? なにそれ。別にいたところで関係ない」

「こんな風に卑怯な真似して満足ですか?」

 室内は充実しており、財力がありありと窺えた。きっと何不自由なく暮らしているのだろう。

「卑怯って、交換条件しただけじゃん。俺の親と会いたいなら果穂チャンを紹介してって。俺ね、果穂チャンのこと前から知ってたんだ」

「私は知らないですけど……」

「じゃあ知ってくれよ。無理矢理は俺も心が痛くなるし」

 再び近付く気配に身構えるとーーグラスを渡される。そこへ度数が低い酎ハイが注がれた。

「瑠美達も30分後には合流するようにしてる。最初だけ果穂チャンと2人で話したい」

 容易く警戒心を解く訳にはいかないものの、とりあえず30分やり過ごせば帰宅の切っ掛けを手に入れられそう。

「それじゃステキな出逢いに〜」

 彼は乾杯を促し、缶を掲げた。私がグラスを握ったまま応じないと痺れを切らして、コツンッとぶつけてくる。

「ははっ、酔い潰してどうこうしようと思ってないって」

「……信用できません」

「まともに俺を知りもしないのにヒドくない? 学校で人を外見で判断しちゃ駄目だって習わなかった?」