空っぽの胃まで苦しい。今後、自分がすべき行動に見当がついていても、一歩目を踏み出せない。ぐるぐる同じ事ばかり考えてしまう。

(こんな自分を変えたいなぁ)

 変わって、ちゃんと和樹お兄ちゃんと向き合いたい。

「ーーあれ? もしかして果穂?」

 とぼとぼと駅前を歩いているとショルダーバッグを引っ張られた。

「やっぱ果穂! これから学校? って、何その顔? どうかしたの?」

 声を掛けてきたのはーー瑠美。そう言えばこの辺りでバイトをしていると言ってたっけ。

「あは、やっぱり酷い?」

「ひどいもなにも痛々しい。そんなに泣くなんてーー失恋?」

 街中で会う瑠美はメイクが濃い目、服装も派手め。私との対比がより際立つ。泣いた原因の候補が真っ先に恋愛なのも彼女らしい。

「失恋というか、その」

 答えに困る。まだ本当の気持ちを伝えていないので失恋以前の段階なのだ。

「前から思ってたんだけど。学費援助してくれるお兄ちゃんはさ、純粋に果穂を応援したいだけで下心は無いんじゃない?」

「お兄ちゃんが下心なんて!」

「うん、無いの。それって果穂が勉強を続けられたらいいって言ってくれる超いい人! 毎日夕飯作りに通ってくれる、それも金銭の面倒をみている子がいたら普通は手を出しちゃう。その人は果穂を女として見てないんだよ」

 赤い唇が告げる残酷な見解に唖然とする。

「時間ある?」

「え、あ、講義に」

「今日ぐらい休んじゃおう! 果穂は失恋してとっても傷付いているんだから!」

 側のショーウィンドウに私達の姿が映り込む。和樹お兄ちゃんが私を女性として見れない現実が見えた。