「味噌汁は家庭の味って言うよね。少ししょっぱいけど美味しい、慣れるよ。果穂ちゃん、俺もおかわりいい?」

「え、あ、うん!」

 お兄ちゃんのおかわりは素直に嬉しい。正樹にはしなかった元気な返事をする。

「良かったらお肉も食べる?」

「んで兄貴だけに分けるんだよ、オレも肉食いたい!」

「正樹はつまみ食いもしてるでしょ!」

 正樹の訴えはスルーして、取り分けようと乗り出す。と、和樹お兄ちゃんがこちらを見詰めているのに気付く。
 意図せず距離を縮めてしまった。

「トンカツもう要らなかった? お兄ちゃんのお皿、空っぽだったから……」

 緊張で耳が赤くなりそう。意識しているのを気取らせない為、身体中の冷静を掻き集める。

「そうじゃない。和樹の嫁さんは知らないが、俺のお嫁さんは母さんと上手くやれると思う」

 話が前後するのでお兄ちゃんの趣旨をすぐ理解できなかった。皿を渡す手を上から包まれる。

 お兄ちゃんを伺う。
 お兄ちゃんはニッコリ微笑んだ。

「あー、そういうのは2人っきりの時にしてくれない?」

 ここで正樹が漬物を音を立てて砕き、不満を述べる。わたしはすぐさま引っ込め、否定した。

「変な事言わないでくれる? 正樹が話し合いしようって私達を集めたんじゃない? それで? 何を話し合うのよ!」

 本題をいつまでも切り出さない正樹を睨む。彼が私を心配してくれているのは知らない振りして。

「ーーちょうど流れ的に言いやすそうなんで、言うわ」

 襟足を掻き、面倒な表情を念入りに作っている。

「由佳さんがお袋に料理を教わりたいって実家へ来たのは知ってるよな? 花嫁修業だとさ」