あの夏の夜も、この想いも、私は全部覚えていたい。


苦しくても悲しくても、これが私と瞬くんの過ごした思い出の形だから。


何一つ忘れたくなんてない。



「…僕は、ひどい男だと思う。美夜ちゃんに待ってるって、大きくなったら会いにいくって言ったくせに、何一つ守れなくて。死んでもまだ美夜ちゃんを苦しめ続けてしまう。…それでも、僕は美夜ちゃんに僕のことを忘れてほしくないと思ってしまったんだ。僕も…美夜ちゃんがずっと好きだから。一生で一度の恋だったから。本当は全部忘れてほしくないんだ…」



初めて男の人が泣いているのを見た。


私の泣き虫がうつったのか静かに涙を流す瞬くんを見て、場違いかもしれないけど綺麗だと思った。



「忘れるわけないでしょ。色素の薄くて綺麗な髪の毛も、優しい笑顔も、温かい手の温もりも、瞬くんが生きていたことも。たとえ世界中のみんなが忘れちゃったとしても私はずーっと覚えてるよ」



私にとってもこれは一生で一度の初恋だったから。



「…ありがとう、美夜ちゃん」