瞬くんと誰もいない時計台裏のベンチに腰掛ける。



「僕は美夜ちゃんと出会った十歳の冬に、心臓病が見つかったんだ。それから大きな病院に行かないといけなくなって東京に引っ越してきた。何度も入退院を繰り返して、なぜだか毎年夏に決まって症状が悪くなってね。美夜ちゃんにずっと会いたいと思ってたけど、あの砂浜にまで会いに行くことができなかった。ごめんね」



今でもまだ信じられない。


せっかくまた瞬くんと会うことができたというのに、もう死んでしまっているなんて。



「中学も高校もあまりまともに行けなくて、ずっと入院してたんだけど一ヶ月くらい前にいきなり発作を起こしてそのまま死んじゃってね。起きた時には幽霊となってこの世に留まっていたんだ。この体で僕は美夜ちゃんを探しに行った。最後にどうしても一目見たかったから。でも世界は広くてそんな簡単に見つからなくてね。もうダメかと思った時に、この時計台の噂を聞いたんだ。駅前の時計台の下には会いたい人に会わせてくれる不思議な力があるって。そしたら本当に美夜ちゃんと会えた」


「…私も、瞬くんに会えたらいいなって思ってここに来たの。ずっと瞬くんのことが忘れられなかったから」



瞬くんが変わらない笑顔で笑った。


この人にずっと会いたいと願っていた。