夜だからか時計台の下は待ち合わせをしている人が何人かいるくらいで、割と静かな場所だった。


その時計台の下に立ちながら、我ながらバカだと自嘲的に笑う。


釣られるようにしてここに来てしまったけど、会えるわけがないのに。



瞬くんとは、七年前のあの日から一度も会っていない。


私は毎年の夏におばあちゃんちに行き、あの砂浜に行っているけど瞬くんは一度も来なかった。


瞬くんの家は知らなかったし、おばあちゃんに聞いてもわからないと返されるだけで、瞬くんとはあれっきり会っていない。



「…帰ろ」



踵を返して帰ろうとした時だった。


こちらに向かって歩いてくる男の人から、目が離せなかった。


男の人は私の視線に気づいたのか、ふと顔を上げ目が合う。



…間違いない。色素が薄い髪の毛も、優しい目も、何も変わっていない。