そのくらいかっこいい男の子に顔を覗き込まれて、私はすっかり泣くことなんて忘れてぽかーんと見惚れてしまった。



「そっか、怪我しちゃったんだ」



男の子が私の擦りむいて血が出ているひざに気づくと、ポケットからハンカチと絆創膏を取り出して手当てしてくれた。



「僕の名前は夜神(やがみ)瞬。君は?」


「えっと…槙野美夜(まきのみよ)。十歳です」


「僕と一緒だ!僕も十歳なんだよ」



瞬くんは笑顔までもが王子様のように優しくてかっこよくて、恋に落ちるのは一瞬だった。



「そっか、お母さんとはぐれちゃったんだね。あっちの方に行けば道路に出るし、そっちにいるんじゃないかな。行ってみよ」


「うん。でも…」



夜の砂浜はなんとも不気味で、今にも海からおばけが出てきそうで足がすくむ。