「あ、いらっしゃいませ」



お客さんが中に入ってきて、大智さんは営業スマイルでそちらに行ってしまった。


怪我の手当もしてもらったことだし、そろそろ私は帰ろうかな…。



「あ、愛花ちゃん。せっかくだし一杯くらい何か飲んで行ってよ。お金のことなら気にしなくていいよ。朔夜のおごりってことで」


「なんでだよ」



奥に行っていたはずの小山くんが、腰にエプロンをつけながら戻ってきた。



「あれ、珍しい。手伝ってくれるの?」


「ああ、暇だし。…あんたも、もう少しいたら?おごってやるし」


「え?」



なぜか小山くんが「帰るなんて言わないよな?」といった視線を送ってきて、上げかけていた腰を元に戻す。