ゆっくりと目を開けると、そこは見慣れたビルが立ち並ぶ駅前だった。



「お母さん…?」



ハッと寝転がっていたベンチから飛び起き辺りを見渡すが、ツンツン頭の男の人はもうどこにもいなかった。



「こんなところで寝て、心配したのよ…!何してるの!」


「…ごめんなさい」



お母さんは素直に謝った私にわかりやすいくらい驚いたように目を見開いていた。



「今までたくさん心配かけて、迷惑もかけてごめんなさい。たった二人の家族なんだから、もっと大切にしないとダメなのにね。大切な人はいついなくなるかわからないもんね…」



最愛のお父さんを失ったお母さんは、塞ぎ込むことなくここまで私を育ててくれた。


その裏にはきっと何度も涙を流した夜や、思うことがあっただろうにそれを感じさせないくらいお母さんは私を大切にしてくれた。