「こちらこそ…色々とありがとうございました。あ、そうだ、最後に名前だけでも…」



十六年後の未来で探せるかはわからないけど、それでもこの人に会いに行きたいな…。



「…さっき言ってた子どもの話なんだけど、名前をつけたの俺なんだ。生まれるって電話が来て急いで病院に向かっている時に、ふと見上げた空が息を呑むほど綺麗でさ。今まで見た中で一番輝いて見えたんだ。だから迷わずに夜空(よぞら)って名前をつけた」



男の人が優しく目を細めると、頭に手を乗せてきた。


もう体はだいぶ消えかかっていて、手が乗っているのかもわからないけど、それでも温かいと感じた。



「…いつから気づいて…?」


「はは、最初からかな。わかるよ、だって俺は…」



最後の言葉がよく聞こえなかったけど、優しく微笑む男の人の後ろで輝いている夜空が綺麗だな、とそう思った。





「…ら。夜空!」