男の人はベンチに腰掛けると、隣に来るように笑って促してきた。



「俺な、今25歳で働いてて、不器用だからいつも失敗ばっかして怒られてんだけど、それでも頑張る理由があんだよ。大切な家族が二人いるから。そいつらを守るために、俺は頑張ってんの」



男の人がにっと眩しく笑った。


…ふと、その笑顔をどこかで見たようなそんな気がしたけど、それがどこだったか思い出せなかった。



「奥さんと子どものために俺は生きてるんだ。奥さんには高校の入学式の時に一目惚れして、そっからずーっと一途に想い続けてんの。十回くらいは振られたけど、それでも根気強く告白し続けて最後は俺の粘り勝ち。今じゃ俺の奥さんだし、まだ0歳の可愛い女の子もいるんだ。超幸せだよ」


「…へぇ」



ちょっとかっこよくていいな、と思っていたから、まさかもう結婚してて子どもまでいるという事実に少しへこみながら相槌を打つ。



「俺が抱っこすると泣いちゃうんだけど、それでも可愛くて可愛くて仕方ないの。笑顔が俺に似てるって奥さんも言ってくれてね、嬉しかったなぁ。俺はきっとこの子に何をされてもずーっと愛せるって思ったよ。世界で一番大切な宝物だからね」



笑顔、か…。