「はあ…」



お金もなくどこにも行く場所がなかったため、駅前の時計台の下にあるベンチにため息をついて座り込む。


夜の駅前は明るく、私が今いるこの場所だけが切り取られたかのような孤独感を感じた。



ふと空を見上げると、星空は見えないけどまんまるの満月が淡く光っていた。



…そういえば、こんな噂を聞いたことがある。


満月の夜に駅前の時計台の下では稀に不思議なことが起きることがある、って…。



「なんて、そんなわけないか…って、うわぁぁぁ!?」



体重をかけすぎたせいか、夜空を見上げた格好のままベンチごと後ろに倒れる。



「い…ったた…」



咄嗟についた手がジンジンとして痛かったが、それ以外は特に怪我もなくすんだようだ。