「おーい、祐月!」
聞き慣れた…というか、警戒し尽くした声が聞こえる。
教室の前のドアには、俺の最大の恋敵がいた。
「…流空」
佐々木流空。
5年のときに俺たちのクラスに転校してきた曲者。
正直、俺はこいつが苦手だ。
桜楽を奪い合う恋敵ってだけじゃなく。
こいつはいつも笑っていて思考が読めない。突拍子もない行動をして、周囲を驚かせる。
しかも、俺は流空のとある「一面」を知っていた。
『…ねぇねぇ祐月!』
『…なに』
『お前、桜楽のこと好きでしょ?』
いつもなら、その言葉はからかいだと思うところだった。
しかし…流空の言葉には、確信を含んだ…探偵のような響きがあった。
『俺も好きなんだ、桜楽』
そういった流空の顔は、笑顔だった。