side.祐月





 家に着き、カバンをおろして一息つく。





「っはぁ〜…」





口から出たのは、思った以上に大きいため息だった。

ジタバタと暴れ出したくなるような衝動を抑え込み、勉強机につっぷする。

窓の外には、うるさいくらいに主張してくる眩しい夕陽と、騒ぐ小鳥たちの姿。


そういや、と俺は目を細めながら思う。

桜楽も、よくこうやっていたっけ…。

 学校で疲れたり嬉しかったり、なにか感情が高ぶったときに、桜楽はよくこうしていた。


好きな人の癖って、移るんだな…。

桜楽の愛らしい姿を思い浮かべると、心臓は衝動が収まったのか、鼓動が高鳴りだしたのかよくわからない行動をした。



 俺は、桜楽が好きだ。


桜楽は欠点も短所もない、完全無欠で完璧な俺の好きな人。

優しく、正義感が強くて平等で、困っていたり泣いている人がいると助けないと落ち着かないっていう、生来の善人。


俺も、桜楽に救われた一人だけど…。