「祐月」
そっと私が祐月に声をかける。
祐月は示し合わせたみたいに私を見た。
「勝てる?」
勝てるなら、祐月に任せられる。
勝てない可能性があるなら…一般競技に行ったほうがいい。
だけど、私は返答を知っている。
祐月は運動特化のクラスメイトに、最後まで喰らいつけたから。
「勝てる。というか、勝つ」
その言葉に、私は息をついた。
全員が、意を決したようだ。
「碓氷くん、お願いできますか?」
体育委員の目を見て、祐月はまっすぐに頷いた。
「それでは次に、選手種目を決めたいと思います」
何事もなかったかのように続けられる種目決め。
黒板に書かれた種目は五種類。
1000m&1500m、100m、50m、障害物競走、借り物競争。
う〜ん…。私は走るのは苦手な方だし、足手まといにならないように借り物競争かな…。
祐月は二種目決定してしまったので、すでに高みの見物。
…こういうときは腹立たしくなるなぁ。