頬を膨らませたままの流空に促されて、校門を出る。
入学式のときに咲いていた桜は、もうとっくに葉桜になってしまっていた。
二人で歩きだして、前みたいに好きな本のキャラクターの話ばかりをする。
…この調子なら、約束、忘れてくれていそうかな…?
誤魔化すのはいけないことだけど…本当のことを言うと隠しておきたかったから、助かる。
言う覚悟はあるんだけど…どうしても、ためらっちゃうっていうか…。
だから、流空が昨日のこと全部忘れて…何もなかったみたいに過ごしたい。
…世の中は、そんなに甘くなかったみたい。
「桜楽、まだ聞いてないよ」
「え?」
この真剣で強気な表情…もしかして…。
嫌な予感が背筋を走った。
「桜楽の好きな人!俺言ったのに、まだ聞いてないっ!」
流空が今日何回目かもわからない頬をふくらませる。
や、やっぱり覚えてたっ…。
流空のキラキラした視線が眩しい。
そっと目をそらしても、流空は私より身長が高いから、すぐに視線を塞いでくる。