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「ねえ、桜楽」
「ん?どうしたの、流空」
クラスにも学校にも馴染んで、数週間後。
俺は、やっぱりあの日のことが気になって、桜楽に話しかけた。
「助ける」じゃなく「支える」。
そんな考え方、簡単にできるものなのだろうか…?
誰が教えたんだろう。
気になったんだ。
そしてもう一つ。
彼女にこの考えを教えたのは、ある一人の少年じゃないかと思った。
碓氷祐月。
桜楽の幼なじみで、おそらく桜楽に片思いをしている男。
こいつじゃないか、と思ったんだ。
「桜楽ってさ…なにか、あの」
うまく言葉にできなくて、下を向く。
だけど取り消すわけにも行かなくて、訊く。
「桜楽にとって、碓氷ってどういう人?」
桜楽は祐月の名前が意外だったのか、俺の目を見て、少しだけ考える。
「何より大切な、幼馴染!」
桜楽の笑顔に、俺は確信した。
桜楽は、桜楽も、祐月に恋をしているって。
その絆は、俺が立ち入る隙もないほど強固なものだって。
桜楽は祐月に「支えられて」こんな優しくて完璧な女の子になった。
その強さを、俺を超えることは絶対に不可能だった。
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