* * *


「ねえ、桜楽」

「ん?どうしたの、流空」


クラスにも学校にも馴染んで、数週間後。

俺は、やっぱりあの日のことが気になって、桜楽に話しかけた。


「助ける」じゃなく「支える」。

そんな考え方、簡単にできるものなのだろうか…?

誰が教えたんだろう。


気になったんだ。


そしてもう一つ。

彼女にこの考えを教えたのは、ある一人の少年じゃないかと思った。





碓氷祐月。





桜楽の幼なじみで、おそらく桜楽に片思いをしている男。

こいつじゃないか、と思ったんだ。


「桜楽ってさ…なにか、あの」



うまく言葉にできなくて、下を向く。

だけど取り消すわけにも行かなくて、訊く。



「桜楽にとって、碓氷ってどういう人?」



桜楽は祐月の名前が意外だったのか、俺の目を見て、少しだけ考える。



「何より大切な、幼馴染!」



桜楽の笑顔に、俺は確信した。


桜楽は、桜楽も、祐月に恋をしているって。


その絆は、俺が立ち入る隙もないほど強固なものだって。


桜楽は祐月に「支えられて」こんな優しくて完璧な女の子になった。


その強さを、俺を超えることは絶対に不可能だった。


* * *