俺の家は金持ちだった。

父親は大企業の社長。

母親は有名女優。

姉は超難関大学に合格していたし、弟は声優としてメキメキと才能を見せつけていた。



きっと、幸せな家庭だった。



きっかけは、些細なものだった。

母親の言動が原因で、父親の会社が倒産した。


幼い日、夫婦喧嘩で眠れなかった深夜。

それは俺の中にしっかりと刻みつけられた。



翌日、父親は消えた。

母親と俺たちを残して。


「流空、父さんの幸せを願っておくれ。な?」


―――寒気がした。


勝手に捨てたくせに、まだ幸せを願ってくれると考えている父親に。

幸せなんて願うわけがない。自分を不幸にした相手に幸せになれと願うのは聖人だけだ。


母親は父親がいなくなり、女優業も不調になった。

結果、壊れた。