「ふぁぁ〜……ん?」




 目を覚ますと、しばらく状況を理解するのに時間がかかった。

制服のままベッドに寝ていて、スマホはとうに充電切れ。

髪の毛もボサボサで、外では小鳥が元気に鳴いている。


 眠い…まだ、寝ちゃダメかな…。

目覚まし時計を見ると、朝の5時。いつもの時間帯だ。

だけど、今日は起きるのが億劫だった。




「学校…行くのかぁ…」



別に嫌とか、そういうわけじゃない…と思う。

祐月に会うのは怖いけど、メッセージじゃ伝えられないこともあるから、私は祐月に会いたい。

伝えないと。誤解を生んだままじゃ、ずっと苦しいのは私と祐月だ。






「気にしてないよ」






口に出して、自分の意志を確認する。

祐月に言いたいことは、これだけ。

大丈夫だよって伝えたい。

 ワイシャツに袖を通し、上着を着る。頬を叩いて、気合を入れる。

朝の七時に、私はいつも家を出る。

朝の空気はすっとしていて気持ちがいい。毎朝、この風と小鳥の鳴き声に包まれて、私は通学路を歩く。


 今日は…やっぱり、足が重い。

鉛玉が付いたみたいな足を、ゆっくりゆっくり動かして、学校を見据える。

こんなに緊張して通う日が来るなんて、思いもしなかった。


入学式よりも強い空気感が、学校から押し寄せているみたい。

怖い、けど、行かなきゃ何も始まらない。

私は中学校に向かって、やっぱり重たい足を踏み出した。





* * *