桜楽が、欲しい。


口に出してはいけない。表に出してはいけない。と、その感情を自分の奥に抑え込む。

これが嫉妬であり、独占欲だと俺は知っている。

その感情を持つ自分に、戸惑う。そして、それと同じぐらい…。


 桜楽への返答に、戸惑ってしまう。


桜楽が、好きだ。

その思いは、金輪際消えることはない。

ただ、どうしても消えない悩みが、俺の心にブレーキをかけている。








『桜楽に近づくな!』








桜楽の友人たちの声が、耳の奥にキィンと響く。

俺はただでさえ女子から嫌われている。

二年の頃の事件もあり、気味悪がられたり、毛嫌いされたりというのは日常茶飯事。

もう、俺自身は慣れてしまって、罵詈雑言をぶつけられても何も感じない。

でも、桜楽が俺のせいで傷ついたら?

俺が桜楽を、傷つけてしまったら…?

俺を見て怯える桜楽の表情が、脳裏に浮かんだ気がした。