そのまま手錠をかけられると理子は警察官に両脇を抱えられながら連れて行かれた。佳代も手錠をかけられそのまま連れて行かれた。隼人も事情を聞きたいと言われそのまま一緒に警察へ行くことになった。


 マンションの下で優とメイが待っていた。
 警察官が有羽を連れてくると優が受け取った。
「有難うございました」
「事情を伺いたいので、一緒に署の方へ来て頂けますか? 」
「わかりました」

 有羽は優の腕の中でギュッと捕まってしがみついていた。
 そんな有羽を横目で見てメイは胸が痛んでいた。



 その後…。
 事情を聞かれた優とメイ。
 有羽は事故に遭遇させられそのまま連れて行かれたが、怪我もなくどこにも異常はないようだ。 

 
 バタバタと時間が過ぎ解放されたのは夕方だった。
「有羽、おじいちゃんとおばあちゃんの家はまた今度にするか? 」
「うん、今日はママと一緒にいたい」
 ギュッとメイの手を握ってきた有羽。
 素直に笑っている有羽を見ると、嬉しい気持ちと申し訳ない気持ちが込みあがって来たメイ。


 とりあえずそのまま宗田家に戻る事にした。


 理子と佳代は誘拐犯として逮捕された。だが理子は、あのまま病院へ運ばれてしまった。どうやら急に心臓発作を起こしたようだ。移植した心臓はずっと元気だったが、なぜか発作を起こして悪化して拒否反応を起こし始めているようでとても危険な状態に陥っている理子。

 隼人は全てを話した。
 計画的にレイラに近づいて心臓を奪うために企んできた事を。ひき逃げしたのは佳代と理子だが、レイラに近づくためにレイラの両親を殺害した事も告白した。
 証拠写真は花恋が持っている事も話した。

「…今になって何を言っても信じてはもらえませんが。…今更ながら俺は、レイラを愛していたと思います。…彼女が子供を産んでくれていて、ありえなくても俺の子供であればと期待してしまったのです。…有羽君はとてもかわいくて…一緒にいると心が癒されました。…勝手に連れて来た時も怖がることなく、俺に笑ってくれました。…」
 隼人に向かい合って話を聞いている男性刑事は小さくため息をついた。
「そんなに愛していたなら大切にするべきだったんじゃないか? いくら母親に認めてほしくても。お前は、彼女を手に入れたくて彼女の両親を毒殺した。そこまでして手に入れた女なら、お前が幸せにしてやるべきだっただろう? 」
「…はい…」
 小さく返事をした隼人の頬に涙が伝った…。

 隼人は結婚したふりをしていただけだったが、思い返せばレイラはいつも笑顔で美味しい料理を作ってくれてお弁当もバランスの良いお弁当を作ってくれていた。あの夜…レイラを抱こうとしたが止めてしまったとき。隼人は本気で気持ちが通わない関係は持ってはいけないと思った。その後、レイラに騙している事がバレてしまい結婚ごっこは終了した。

「俺は…後悔していたのかもしれません…。もっと早くレイラに出会っていれば、俺の人生は変わっていたのかもしれないと…」

 初めの表情とは全く違う隼人。
 自分の本心に気が付いたことで本当に誰を愛していて、必要としていたのか自分でも自覚してきたのかもしれない。


 一方佳代の方は、取り調べに対しても悪態をつき知らぬ存ぜぬを通していたが、証拠を突き付けられると苦虫を噛んだような表情で黙ってしまう。ホストを誘惑して利用していた事も明白になり榊英二を利用して娘の乃亜を妊娠して隼人の子供だと偽っていた事も証明された。

 榊英二は佳代から結婚すると言われていて関係を続けていたが、急に佳代が政略結婚する事になったと言って1000万渡してきてこれで縁を切ってほしいと言い出してきた。逆らっても金の力でねじ伏せられることは分かっていた事から英二は言う通りにしてもらったお金でホストからは足を洗いインストラクターとして新しい道を切り開いた。
 しかし5年経過してまた佳代が言い寄ってきて体の関係を迫って来たが拒否した。それと同時にメイとも出会って話す機会も増え英二はずっと暗く閉ざされていた心が晴れてきたような気がしていた。佳代と離れて一般女性と結婚して家庭を持った英二は、佳代に着きまとわれることが怖く弁護士を雇って相談したところだった。佳代との間に生まれた娘の乃亜には一度も会わせてもらえないが養育費だけは請求されていた。手切れ金はもらっても英二が父親であることは間違いないと言われて仕方なく毎月20万円送金していたが会わせてもらえない娘に容器句碑を払い続ける事も不服だったようだ。

 佳代には誘拐犯そして未成年を誘惑した淫行の容疑もかかっている。当面塀の向こうから出てこれないんが見えている。


 そして理子は…。
 逮捕と同時に病院へ運ばれた理子は警察病院に隔離されている。一まで元気だった心臓が急に発作を起こし悪化するとは考えられないと、医師も驚いている。
 苦し紛れの中で理子は
「…レイラ…レイラが襲ってくる…許して…」
 と、うわ言のように言っている。
 この状態では取り調べも不可能で様態が安定してからになりそうだ。