「なにかご不便な点があるんですね?なんなりとおっしゃってください。」

「実は・・・あらかじめ設置されていた給湯器の調子が悪くて・・・もしかして故障してるんじゃないかと思うんです。でも私の使い方が悪かったのかも、と思うとなかなか言い出せなくて・・・。」

「そうだったんですか。それは大変でしたね。管理会社を通じて早急に修理業者を手配いたしますね。設置されている備品修理は基本的に部屋のオーナー様のご負担となりますので費用のことはご心配されなくても大丈夫ですよ。後ほど堀内さんの元へお電話が届くと思いますので、その際に給湯器の現状や修理日のお日にちを業者さんとご相談して頂くことになると思います。ご対応よろしくお願いします。」

渚の説明に美和子はホッとした表情を見せた。

「あー良かった!ずっとひとりで悩んでたんです。友達に相談したら不動産屋の担当者に伝えてみたらって助言されて。もっと早く岡咲さんに相談すれば良かったな。」

「これからも何かありましたら、どんな小さなことでもおっしゃってくださいね。」

「はい!またよろしくお願いします。あ、そうだ。岡咲さん、これ飲んでください。岡咲さんのお口に合うといいんだけど。」

美和子は大きなトートバックからコーヒーのペットボトルを取り出した。

「いえいえ、そんな。堀内さん、飲んでください。」

「私はお茶があるので!」

そのペットボトルは渚がいつも飲んでいるメーカーのミルクコーヒーだった。

「それでは遠慮無く頂きますね。・・・これ、私が好きなやつです。ありがとうございます。」

渚はそう礼を言うと、そのペットボトルを美和子から受け取った。

「良かった!前に岡咲さんのカバンから、そのコーヒーが見えたから、お好きなのかなあって思って。」

「はい。大好きです。」

細やかな心遣いが出来る美和子を、素敵な女性だな、と渚は改めて思った。