渚は奈央との勉強が終わったあと、『紫陽花と少年』を読み聞かせることにした。

初めは乗り気ではなかった奈央も、話が進むにつれ熱心に耳を傾けるようになった。

「渚。今日も『紫陽花と少年』読んでくれる?」

宿題のプリントを終わらせた直後、奈央は渚にそうせがんだ。

「もちろん。ほら、今日も持ってきたよ。」

渚は奈央の目の前に『紫陽花と少年』の単行本を差し出した。

「やった!」

「奈央君は本が好きになってきたね。」

「うん。一番好きなのは図鑑だけど、最近は小説も好き。」

「そう。だったら国語の成績もアップしちゃうかもね。」

「うん。このまえの国語の小テストも満点だった。」

「どれどれ。私にも見せて?」

「いいよ。ほら。」

奈央は机の引き出しから白いプリントを取り出し、渚に手渡した。

その表情は誇らしげだ。

それもそのはずで、答案用紙は全ての問題に赤丸が付けられ、右上には100という数字が大きく書かれていた。

奈央の成長の早さに渚も喜びの笑みを浮かべた。

「湊さんにはもう見せた?」

「うん。よくやったなって頭に手を当てて褒めてくれたよ。」

「そう。良かったね!」

湊の方も褒めて伸ばす教育法を実践し、保護者として成長しているようだ。

自分の言ったことを素直に受け取ってくれた湊を、渚は嬉しく思った。