しかし美々は頭を横に振った。

「違うんです!それ、浮気じゃなかったんです!」

美々の嬉しそうな顔に渚は怪訝な目を向けた。

「じゃあなによ?」

「なんだと思います?」

「・・・・・・?」

「なんと!マー君が飼ってるオウムの声だったんですよぉ。」

「オウム?オウムってしゃべるの?」

「それがめちゃくちゃしゃべるんですよぉ。もう笑っちゃうくらい。マー君が飼っているオウム、モモコっていうんですけど、モモコのせいで私達、破局の危機迎えましたから。それくらい上手に話すんですよ。オウムって。」

「ふうん。」

「この前のお家デートで初めてモモコと会ったんです。それがとても可愛くて。それ以来通話口でモモコの声が聞こえてくると、思い出しちゃうんですよねぇ。モモコ、可愛かったなって・・・。」

「声・・・?」

「そう。声って不思議ですよねえ。記憶に残るっていうかぁ。」

「声・・・声・・・そうか!」

渚は美々の言葉に、閃きを得た。

「そうよ・・・奈央君の声を美里さんに聞いてもらったら・・・もしかしたら」

「ナオ君・・・って誰ですかぁ?」

渚は首を傾げる美々のふくよかな両手を掴んだ。

「美々ありがとう!今度特上うな重奢る!」

「なんか知らないけど、わーい!」

美々の脳天気な声は、もう渚の耳には入ってこなかった。