「なに勝手なこと言ってんのよ。」

渚は顔を上げ、座った目で美々と華を睨んだ。

そんな渚に、華は柔らかい笑みを浮かべた。

「渚、何ひとりで悩んでんのよ?話してみなさい。」

「そうですよお。黙っているなんて先輩らしくもない。」

「・・・心配かけてごめん。でもそう簡単に話せることじゃないの。」

そうつぶやく渚に、美々と華は顔を見合わせた。

そんな湿った空気を吹き飛ばすように、美々が渚の肩を揺すぶった。

「じゃあ渚先輩の悩みはひとまず置いておいてぇ。私の笑い話を聞いてくださいよぉ。」

「なによ。笑い話って。」

「私、この前彼氏と喧嘩しちゃったんですよお。」

「喧嘩?あんたと公務員の彼氏、ラブラブなんでしょ?」

「まあそうなんですけどぉ。」

美々の話を要約すると、美々とその彼氏マー君はその夜スマホで通話をしていた。

するとスマホ越しに女性と思われる声が聞こえてきた。

その声は何度も「マー君♡」と大きな声で呼びかけていた、とのことだった。

「もう私ぶち切れちゃってぇ。私というものがありながら、なんで他の女と一緒にいるのって泣き叫んだんですぅ。」

「浮気されたってこと?そんな軽い男とは速攻別れなさい。」

渚は一刀両断した。