再び連城家の屋敷に招かれた渚は、応接ソファに座った固い表情の湊と向き合っていた。

「そうですか。渚様、美里お嬢様とお会いになりましたのね。さぞかし驚かれたでしょう。」

そう平然とした口調で言いながらもやはり動揺しているのか、渚と湊の前に熱いミルクコーヒーを置いた絹の手は細かく震えていた。

「絹さん。奈央は・・・?」

「奈央坊ちゃまでしたらお部屋で宿題をなさってますわ。私がしっかり見張っていますから、お二人でゆっくりお話なさいませね。」

「いつもありがとう。絹さん。」

そう頭を下げる湊に、絹は柔和な眼差しを向けた。

湊がミルクコーヒーを口にし、渚もそれに倣った。

しばらく無言で目を伏せていた湊が、顔をあげて渚を見据えた。

「今から話すことは他言無用でお願いしたい。特に奈央には絶対に言わないで欲しい。約束してくれ。頼む。」

いつになく低姿勢な湊に、渚は場を和ませようとあえて軽く言った。

「湊に頼まれなくても、誰にも何も言わないわ。私、こう見えて口が堅いの。」

「それは好都合だ。スキャンダルを嗅ぎつけた、週刊誌の記者に追い回されるのはご免だからな。」

湊がようやくいつもの憎まれ口を叩き、乾いた笑い声をたてた。