スマイル&ピース不動産の定休日。

渚は母汐子と一緒にキッチンに立ち、昼食を作っていた。

今日の献立は餃子と卵スープ、あとは昨夜の残り物であるかぼちゃの煮物。

「そう。しっかり種を包んで。ああ、ちょっと入れすぎ!」

不器用な手つきで餃子を作る渚に、汐子が注意を入れる。

餃子なんて冷凍やチルドで出来上がっているものを焼くだけで良くない?

そんな自分のこれまでの考えを、渚はふるふると蹴散らした。

湊が奈央を励ます為に美味しいスイーツを作っているように、自分も愛する誰かが出来たときに手料理で気持ちを伝えたい、そんな思いが渚の心にいつしか芽生えていた。

それを実現すべく、渚は出来るだけ料理を練習しようと、積極的に汐子の手伝いや、和樹のように自作の弁当を作るよう心がけるようになった。

それに伴ってその他の家事にも目を向けるようになった。

いざ始めてみると家事というものは、思っていたよりもだいぶ手間がかかるものだと渚は気づいた。

ゴミの分別は燃えるゴミ、燃えないゴミ、プラスチック、びん缶、古紙、ペットボトル・・・と曜日ごとに細かく分かれていて、一日でも忘れると次の収集日まで捨てることが出来ない。

掃除だってマメに掃除機をかけないとほこりがすぐに溜まる。

ルンバに任せればいいと言っても、やはり隅々のほこりは人間の手でないと綺麗にするのは難しい。

冷蔵庫の中の食べ物の整理。

気をつけないとあっという間に残り物がミイラ化してしまう。

洗濯機に溜まる糸くずの処理。

お風呂場のカビ予防。

家事というものはサボろうとすればとことんサボれるけれど、徹底的にやろうと思ったらいくらでも仕事がある。

何事も完璧を目指す渚は、家事の奥深さを痛感していた。