「僕ね、ダンボールハウスドールのガチファンなの。」

「ダンボールハウス・・・ドール??」

渚はその単語の意味がわからずぽかんと口を開けた。

「え?ダンボールハウスドール・・・知らないの?やだ。信じられないんだけど!」

小川は口をへの字に曲げて身体をくねらせた。

「も、申し訳ございません。勉強不足で・・・」

「なーんちゃって。冗談よ。知らなくても仕方が無いわ。ダンボールハウスドールは世間からはまだ認知度が低いけど、お笑いファンの間ではコアな人気がある女性お笑い芸人のコンビなの。片方は毒舌キャラでもう片方は天然不思議ちゃん。そのバランスがいいのよ~」

そう言われてみれば、そんな名前をバラエティ番組で聞いたことがあるような気がする。

「ほら。この二人。」

小川のスマホの待ち受けには、赤いおかっぱ頭と金髪ツインテール女子二人の変顔をしている写真が設定されていた。

「僕、この二人が好きで好きでたまらなくてねえ。推し活してんの。」

「推し活・・・」

それとこのマンション購入とどう関係があるのだろうか?

「そのダンボールハウスドールの所属する芸能事務所が、今回購入した『チェリオガーデンマンション』のすぐ近くにあるわけ。ダンボールハウスドールはその芸能事務所内に設置されてるライブハウスで週に2回ネタを披露してるんだけど、僕としてはそれを一日も欠かさず観に行きたいの。でも自宅からは遠くてさ。だったら近くにセカンドハウスを買っちゃえばいいじゃん!って思ってね。」