それから渚は奈央を勉強机に座らせ、宿題のプリントに向かわせた。

ゆっくりと問題を解く奈央を辛抱強く見守り、答えが合っていたら褒め、間違っていたらどうしてその答えになったかを考えさせ、正しい答えに導いた。

私立の小学校だからか、小学生にしては少し難しい問題が多かった。

「そうそう。その公式をつかえばいいの。」

「もう一回やってみようか。」

「うん。うん。よく出来たね。」

渚は家庭教師のバイトをしていたときも、徹底的に褒めて伸ばす教え方を実践してきた。

奈央の険しかった表情も、問題が解けるたびに柔らかくなっていく。

そして全部の問題が解き終わり、二人で万歳をした。

奈央がプリントをランドセルに仕舞うのを確認し、渚はゲームのリモコンを持った。

「よーし!じゃあゲーム対決しようか。負けないわよ?」

「僕だって負けないよ!」

渚と奈央は声を出して笑いながら、ゲームを始めた。

その様子を部屋の扉の向こうで、湊が聞き耳を立てているのを、渚はまだ知るよしもなかった。