「あー今回も駄目だったあああ。」

毛先を軽くウエーブさせた髪は、昨日美容院でセットしてもらったばかり。

服装はそのスレンダーな身体にぴったり合った、オフホワイトのフェミニンなワンピース。

パンプスだっておニューだし、ネイルもピカピカに仕上がっている。

なのに・・・今日も今日とて、それらは無駄遣いに終わった。

緑豊かな自然公園の赤いベンチに座ると、渚は大きくため息をつき肩を落とした。

今日のデートのお相手は、マッチングアプリで知り合った、渚より3つ年上の大手出版社勤務33歳男性。

背が高く涼しげな目元が印象的なイケメンでルックスは合格。

実家は資産家だし、住んでいるところは港区赤坂の高級マンション。

趣味はジム通い、特技は剣道、芯が強そうでいて物腰は柔らか、余裕ある男といった風貌。

申し分ないスペックだった。

やっと私の王子様に出会えた!・・・と思って胸がドキドキとときめいた。

なのに・・・結婚したら妻には絶対に仕事を辞めて家を守ってもらいたい、だって!

絶対にって・・・なんて時代錯誤な男なの?

いまどき共働きなんて普通のことじゃない?

なんで女ばかりが仕事を辞めて家事育児だけをしなければならないの?

もちろん子供は欲しいけれど、家事だってちゃんとやるつもりだけれど、それを女ばかりに負担させるのは違くない?

それをストレートに伝えたら「俺達、価値観が合わないみたいですね。これ以上一緒にいても時間の無駄なので帰ります。」って高級フレンチレストランに女一人置いていくってどういうつもり?

せめて話し合う姿勢を見せなさいよ!

超優良物件だと思ったのにとんだハズレ物件だった。

ああ、あんな男にちょっとでもときめいた自分が馬鹿だった。

あの「顔だけ俺様男」に一言いってやれば良かった。

時間とお金を無駄遣いしたのは私の方なんだからね!って・・・

・・・あーあ。やっぱり私に婚活なんて無理なのよ。

もう一生おひとり様でいい。

自分の力で新築マンションの部屋を買って、猫を可愛がりながらのんびり優雅に暮らすの。

私が子供を産まなくても父や母には穂波という孫がいるんだし、これ以上期待させるのも申し訳ないし、折りをみて婚活卒業宣言をしよう。