「あら。お帰り渚。いつ帰ってきたの?」

汐子が今気づいたというように、渚に声をかけた。

「さっきからただいまって言ってましたけど?」

「遅かったじゃない。もしかしてデート?」

「・・・・・・。」

渚が言いよどんでいると、夏海がにやにやしながら甲高い声をあげた。

「んなわけないじゃん。お姉(おねえ)は今日もどうせ華ちゃんの店で飲んできたんだよね?」

「そうだけど?悪い?」

「お姉さ、そろそろ彼氏作りなよ。せめて一人暮らししたら?お母さんに一切家事をまかせっきりでさ、結婚したらどうするの?ご飯作れる?そんなんで主婦になれんの?ちゃんと将来のこと考えてる?」

「夏海だって毎日実家へ顔を出して、晩ご飯を食べに来るじゃない。そんなんで主婦してるって言える?」

渚も負けじと応戦するが、穂波という切り札を持つ妹相手に勝ち目はなかった。

「いいじゃん。それが二世帯住宅のいいところだもん。お母さんだってお姉だって毎日穂波の顔見れて嬉しいでしょ?」

「・・・それはそうだけど。」

それを言われると弱い。

「とにかくちゃんと考えなよ?」

「うるさいなあ。考えてるって。」