「ただいまぁ。」

「なぎさおかえりなさい!」

渚が自宅の玄関のドアを開けて声をあげると、真っ先にピンクのワンピースを着た姪の穂波(ほなみ)が廊下から走り寄ってくるのが見えた。

長い髪をツインテールにした穂波が渚に抱きつく。

その姿はまるでマルチーズみたいだ。

たまらなく可愛くてつい口元が緩む。

渚は「ほなみーただいま!」と微笑みながら、まだ幼い穂波の頬をつついた。

妹の娘である穂波は6歳、つい先日小学校へ入学したばかりだ。

なぜか穂波は赤ちゃんの頃から渚になついていて、隙あらばべったりとくっついてくる。

もちろん渚もたったひとりの姪である穂波に首ったけで、休みの日には穂波と一緒に公園へ散歩に行くのが楽しみのひとつとなっていた。

穂波と手を繋いでリビングに入ると、ダイニングテーブルに座った母汐子(しおこ)と妹の夏海(なつみ)は、大福をかじりながらテレビ画面に釘付状態だった。

「おーい。渚さんのお帰りですよぉ。」

そう言って存在をアピールするも二人の反応はない。

「おーい。」

「しっ!静かにして。今いいところなんだから。」

夏海が人差し指を口に当てて、渚を睨み付けた。