「・・・ああ。良かったぁ。」

渚の言葉を受け、湊は大きく息を吐き、情けない声を出して脱力してみせた。

「湊・・・?」

「また振られたら今度こそ立ち直れないところだった。」

「もしかして緊張してたの?」

「当たり前だろ?一世一代のプロポーズだ。」

「あのいつも偉そうな湊がね。」

そう言って渚はクスクス笑った。

「お前のせいで俺は連日寝不足だったんだ。どうしてくれる?」

「私だって湊のせいでお肌は荒れるし、食事も喉を通らなくて痩せちゃったわよ。どうしてくれるの?」

「ダイエットになって良かっただろ?」

「はあ?これ以上綺麗になって私がモテちゃってもいいの?」

「お前みたいなじゃじゃ馬、乗りこなせるのは俺くらいだろ。」

「ん、んん!」

隣のブースを対応していた綿貫の咳払いが聞こえ、渚と湊はあわてて口を閉じ、お互いの指を絡ませ微笑みあった。

「ねえ。私からも条件出していい?」

「なんだ。言ってみろ。」

渚はたたずまいを直し、かしこまった顔で湊に告げた。

「お客様。この物件は契約解除永久不可でございます。よろしいですね?」