そんな渚を尻目に美々はおもむろにバッグからスマホを取り出し指でタップすると、その画面を渚の目の前に差し出した。

「渚先輩。これです。ここで私、彼氏と出会いました。」

渚はスマホ画面に映し出されたサイトの文字を読み上げた。

「ふーん。なになに・・・ラブ・キューピット・・・理想の相手が必ず見つかる・・・登録人数業界ナンバーワン・・・ってこれマッチングアプリ??」

「はい!」

「イヤよ。こういうところってどうせヤリモク男しかいないんでしょ?一回ヤったらぽいなんでしょ?女をなんだと思ってるのかしら。冗談じゃない。」

「そうやって始めるまえから決めつけるのは早いです。そりゃそういう男もいますけど、真剣にお相手を探している真面目な男性もいるんです。私の彼氏のマサ君みたいに。」

「マサ君て・・・ラブラブか!」

「マサ君、彼、吉永雅彦っていうんですけど、区役所の職員なんです。今は国民健康保険の係に配属されてて。真面目な人でまだ手を繋いだこともないんです。」

「ふーん。公務員か。将来のことを考えたら悪くないスペックではあるわね。」

渚は美々の言葉に興味を持ち、真面目に耳を傾けた。

「この前は水族館でいるかのショーを見に行ったんです。最前列に座って大きな水しぶきが飛んで二人とも濡れちゃって。でも彼、タオルを持参してて私の頭を優しく拭いてくれたんですよお。」

そのときのことを思い出したのか、美々は幸せそうに胸に手を当てにんまりと微笑んで見せた。

「へ、へえー。Myタオル持参とは用意のいいことね。」

そう悪態をつきつつも、渚の心は揺らいでいた。

渚の最後の恋人は23歳のとき・・・7年前に付き合った隼人という銀行マンだった。

真面目な男ではあったけれど、デートの支払いを1円単位で割り勘にする細かいところに嫌気がさし、そうなると全てのことが気に障るようになり、エッチどころかキスもせずたった3ヶ月で別れてしまった。