「おふたりでお住まいなら、こちらの物件なんて如何でしょうか?ちょうど最近公開されました新築マンション『エミールグランドマンション』の503号室です。広さは2LDK、南向きで日当たり良好、ウオークインクローゼット有りで収納スペースも充実しています。」

「・・・・・・。」

「このマンションの特徴的な点はキッチンが広く、ディスポンサーも付いているところです。さらにこちらのキッチンには収納棚がたっぷりと備わっております。週末おふたりで料理されるカップルにぴったりなキッチンとなっております。」

「・・・・・・。」

「住環境も整っておりまして、近所には大きな公園があり、四季折々の自然を目で耳で身体で感じることが出来ます。オートロック付きで防犯面もしっかりカバーされるかと。こちらまたとない優良物件かと存じます。如何なさいますか?」

「ああ。じゃあそこにする。」

え?もう決定?

それとも信用されていると喜ぶべきなのだろうか。

湊のあまりにも早い決断に、渚は驚きを隠せなかった。

「・・・ありがとうございます。ではご契約はいつになさいますか?」

「その前に・・・部屋にオプションを付けたい。」

「何でしょう?プラスご予算を申しますと、ビルトイン食洗機でしたら30万、IHクッキングヒーター30万、IHオーブン56万、浴室テレビ45万となっておりますが。」

「岡咲渚。」

「は?」

「岡咲渚をオプションに付けたい。」

「・・・ええっ?」

「逆に言えば、岡咲渚がオプションで付けられれば、部屋はなんでもいい。」

「なっ・・・何言ってんの?!ふざけないでよ。」

「ふざけてない。俺は本気だ。お前と一緒に住めるのならば、部屋なんてどこだってかまわない。」

「・・・堀内さんはどうするの?デートしたんでしょ?」

「お前の大切な客に無下なこと出来ないだろ?一回だけ一緒にスイーツを食ってから丁重に交際をお断りしたよ。心に決めた女がいるからってな。」

そう言うと湊は渚の目を真剣な顔でみつめ、その両手を握りしめた。