湊は思いもよらぬ渚の告白に言葉を失い、やがて渚に言い聞かせるように語りかけた。

「俺はお前に仕事を辞めて欲しいなんて思わない。俺の為にそんなことを考えるな。」

「でも・・・・・・。」

「渚は今のままでいい。仕事を続けろ。」

渚は自分の大きな決断をさらりとかわされた気がして、全身の血が凍った。

・・・私を拒絶しているのね。

渚は湊の言葉をそう理解した。

「わかった・・・・・・。」

終わった。

これで私の恋は本当に終わり。

渚は何かを吹っ切ったかように顔を上げた。

「これからは湊の美味しいスイーツ、堀内さんの為に作ってあげてね。」

「渚・・・俺は堀内さんと」

その時、湊のスマホから着信音が流れた。

「渚、ちょっと待て。大事な電話がかかってきた。だから終わるまで」

しかし渚はこれ以上湊の顔を見続けていることが辛かった。

せめて去り際は綺麗に消えたい。

「もし湊さえよかったら、これからもいい友達でいてね。じゃ」

「あっ。おい!」

渚は言いたいことだけ言うと、湊に背を向けその場を走り去った。