「・・・これ・・・わ、私の・・・気持ち・・・です。」

何度もその言葉を練習したのに、いざ湊の前に立つとしどろもどろになり、言葉がとぎれてしまう。

まるで『紫陽花と少年』のジュンのように。

思えば渚が自分から愛を告白するのは、これが初めてだった。

高いプライドが邪魔をして、断られるのが怖くて、いつも相手から告白されるのを待っているだけの人生だった。

渚の心臓はバクバクと音を立て、破裂しそうだった。

苦しくて思わず泣き出しそうになる。

でもこんな場面で泣くなんて卑怯だ。

涙で好きな男を引き留める、そんな女にはなりたくない。

湊はただ黙ってそのハート型のクッキーを見ていた。

渚は顔を真っ赤に染めながら、湊の目をまっすぐみつめた。

「もう遅いってわかってる。今更なんだって思われることもわかってる。でも、どうしても湊に自分の気持ちを伝えたかったの。」

「・・・・・・。」

「もし・・・もし湊とこの先も一緒にいられるのなら、私は仕事を辞めてもかまわない。」

すると湊は目を見開き、そしてすぐに厳しい顔で渚に問いかけた。

「お前にとっての仕事はそんなものだったのか?」

渚は大きく頭を振った。

「そんなわけない!でも・・・私にとっては湊の方が大切なの。」

「渚・・・・・・。」